祖父の忘れ形見と楽しい日々

祖父母・両親・兄弟とで過ごしていた家で飼っていた柴犬のタロウ。
結構長生きしていて、家を出るまではいつも散歩に連れて行ってました。
実は幼稚園児の頃には近所の犬に足を噛まれて事もあり、犬は怖いって思っていたんですが、タロウのおかげで犬嫌いを克服しました。

大学生になり親元を離れて過ごすことになり、タロウとの触れ合いは自然と減っていく事に。
大学4回生の年末に突然舞い込んだのが、祖父が亡くなったというニュースでした。
祖父とは誕生日が同じという事もあり、とてもかわいがってくれた思い出も多く、私も大好きでした。
亡くなる前日もすごく元気で、自分の足で長い距離を歩いても全然平気。
なので、亡くなったって話を聞いた時は信じられないって気持ちでいっぱいでした。

私が家を出た後、タロウの散歩は祖父がしていて、それもあって元気だったのかなとも思います。

祖父の件を耳にして、すぐに実家に帰りました。
祖母が気持ちを落としていたこともあり、励ます意味で暫く実家に滞在することにしました。
タロウの散歩は私の担当です。

私が散歩を担当していたころは、こんなに距離は歩いていなかったなあと思いながらタロウに引っ張られるまま歩みを勧めます。

亡くなった祖父は毎日この道をタロウと歩いていたんだな~って思うと、目頭が熱くなります。
実家の近辺の景色のはずなんですが、暫く離れていたこともあり、見慣れぬ光景も現れます。

あるとき、タロウが足を止めた場所がありました。
少し高台にある場所なんですが、街並みが一望できるようなところ。
自分が育った場所が見える場所だったんですが、時が経過して見慣れぬものもたくさん。

祖父との思い出と共に暫く思いにふけっていました。
タロウは祖父の忘れ形見としてこの景色を見せに連れて来てくれたのかと。
通っていた小学校や、中学校。
始めてデートで行ったボーリング場。
祖父と買い物に行って迷子になったスーパーまで。

横に祖父がいるんじゃないかなって思うような安心感と共に時間をすごく事が出来ました。
タロウ、ありがとうね。