しつけは芸ではなく安全と安心のためのもの
お手、おかわり、伏せ、マテ……。
愛犬に対してまず思いつく「しつけ」としてはこれらが挙がるのではないでしょうか。
しかしこの中には、必要のないものと必要不可欠なものがあります。
このうち、必要不可欠なものとその理由をお話しします。
欠かせないのは「マテ」です。
よくあるのは目の前にフードを置き、「ヨシ」の合図があるまで食べさせない……という目的で「マテ」を指示することがあります。
わんちゃんからすると「早く食べたいのに」とか「飼い主さんはいじわるだなぁ」と思っているかもしれません。
テレビ番組の企画などでは『何分間、マテができるか』を競わせるものもあります。
しかし重要なのは「何分待てるか」ではなく「待つことができるか」です。
「マテ」とは本来、食べるのを我慢させるのではなく、その場で動かないようにするためのしつけです。
たとえばお散歩中、目の前に食べ物が落ちていた場合。
傷んでいるかもしれませんし、毒が混入しているかもしれません。
もし愛犬がそれに近づく、食べようとしたら……。
この時に「マテ」が必要になります。
きちんとしつけていれば、そもそも拾い食いをしないように教えるのが先ですが、万が一にもこうした事態に直面した場合、落ちている食べ物に興味を示しているわんちゃんを制止しなければなりません。
また、車や人の往来が多い場所でも「マテ」は必須です。
不意に飛び出してしまって車にはねられてしまった……。
知らない人に飛びついてケガをさせてしまった……。
こうした不幸な事故を防ぐためです。
興奮状態にある(もしくは興奮しそうな状態にある)愛犬を、ぴしゃりと制することができるかどうか。
これがしつけとして必要な「マテ」です。
お手やおかわりよりも、最優先で教えなければならないことです。
特に幼犬は好奇心が非常に強く、衝動的な行動に出ることも少なくありません。
愛犬を守るためにも、また家族や他の人の安全のためにも、「マテ」は早いうちからしっかりと教えておきましょう。